生産性が高い人材育成のために、本当に必要な教育とは?
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人材教育はどの企業も取り組んでいる重要課題です。企業で求められる生産性の高い人材を育てるためには、新しい視点を持つことが重要です。単なる研修や社内OJTだけに終わらない、人材教育システムを作る際のポイントをご紹介します。
目次
社内教育の位置づけを、経営の視点から考える
人材教育は人事部の業務と考えがちですが、本来は重要な経営課題として毎年方針を立てる必要があります。従来の利益は、設備投資による効率化、仕入原価のコストダウン、経費の見直しなどのコスト削減や、技術開発、新サービスなど企業主体で生み出すものが主流でした。しかし、現在のようにめまぐるしく変わる経済環境においては、生産性の高い人材が企業の利益を生み出す時代になってきたと言われています。
このように企業の実績を左右する人材教育は、経営課題の一つとして対象者や内容、実施後の効果測定までを一貫して行うことが大切です。
働き方改革で変わる人材教育方法
労働時間の見直しから始まったように見える「働き方改革」も、個人ひいては企業の生産性を高めることが目的のひとつです。これからの人材教育は、生産性向上を意識した内容が求められます。知識や経験をいかに詰め込むかではなく、自分で考えて工夫するという創造性へシフトした内容が注目されています。
働き方改革は働く意識を変えること
生産性が高いということは、単に残業を減らすのではなく、時間内に同じ成果を出す事が求められています。働き方改革の考え方は、与えられた仕事を片付けるという意識から、時間内に成果を出すには何がどれだけ必要か、という意識で働く人材を増やすことです。
効果的な人材教育は評価システムの見直しも
日本企業においては愛社精神や社訓など、海外企業に比べて組織として統率されている分、従業員はある意味で企業から守られてきました。組織に言われたとおり仕事を進めていくことが評価され、協調性が重視される項目のひとつでした。そのため、組織の一員として歯車のようにきちんと動くことが求められてきましたが、最近では外資系を中心に個人の能力や個性を重視し、ある程度の責任を与えて実績に応じた給与体系を採用する企業も増えてきました。このように働く意識を変えるには、企業側の従業員に対する評価システムも見直す必要があると言えるでしょう。
求める人材に応じた課題を設定する
社内で人材教育を考える際に、どんな人材を育成したいかターゲットとなるモデル社員を設定する方法があります。従来の単なる新人教育、管理職教育、専門知識教育など、一律に縦割りのシステムではなく、求める人材に応じた課題を創造的かつフレキシブルに解決する能力を学ぶ人材育成が必要だといわれています。
例えば、営業職の場合、法人営業なのか個人向けの営業なのかによっても、課題は変わってきます。企業の顧客が誰かによって、必要なスキルだけではなくコミュニケーション能力の範囲も異なります。イメージしたモデル社員の行動や成果を目標とすることで、その目標を課題として解決するためのカリキュラムを人材教育の内容に組み入れます。つまり、新人研修から積み上げるという考え方ではなく、営業職の最終目標を考えて入社時ならどこまで、中間管理職ならどこまで、という考え方で行います。
また、課題そのものも、営業職としての商品知識やロールプレイング、グループプレゼン、レポートなどに加えて創造性を高めるための課題も必要になってきます。例えば、入社年数に関わらず新商品の開発をさせる、新会社を設立するシミュレーションを行うなど、まったく経験したことのない課題によって創造性や問題解決能力を育成している企業もあります。
研修を実施するだけでは、人材教育にはつながらない
経営の視点から人材教育の方針は決定しても、実際に行うのは人事部です。一生懸命準備して実施した研修も、実績に結びついているかどうかの評価は難しいものです。eラーニングや体験型研修など目新しい教育システムを取り入れても、一貫性がなかったり、研修時間が業務に影響を与えたり、以下のようなさまざまな問題があります。
- 研修をすることそのものが目的になっている。
- 参加者や講師が、研修の目的や着地点を認識できていない。
- 研修期間や研修時間が業務内容と連動していない。
- 研修後のアンケートだけでなく、業務に戻ってからの効果測定ができていない。
- 毎年同じ内容で、変化がない。
生産性の高い人材を教育するための研修であることを、参加者と講師だけでなく社内全員が共有し、業務での実績につなげるという意識が大切です。そして、研修後には業務に戻ってからの実績をふまえ、次回の研修の内容を検証して改善することも必要でしょう。
自社に合った人材教育システムを構築する
人材教育システムといっても、業務の中で多大な研修時間をとることはなかなか難しいものです。設定した課題にもとづき、課題に関わる社員同士で業務につながる課題解決の時間を常に持てるしくみを作るのも、ひとつの人材教育システムです。話題になった教育システムを急に取り入れたり、従来から行っている研修を毎年続けたりするのではなく、自社がその時の課題に合わせた人材教育システムを構築し、効果を確認して持続できるシステムをおすすめします。